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コラム

高い労働力を確保するために~中小企業向け「賃上げ促進税制」について~

2023.06.15

近年、日本の賃金が欧米諸国に比べて上昇率が低いことが取り沙汰されてきました。30年間にわたって日本の平均賃金が横ばいで推移していることが課題視され、賃上げの必要性が浮き彫りとなりました。人手不足が叫ばれる中、企業が競争力を維持するためには、優秀な人材の確保と定着率の向上が課題となっています。そんな中、注目すべき政策が「中小企業向け賃上げ促進税制」です。

この税制は、中小企業に対して給与の増加を促進するための措置として導入されました。具体的には、雇用者全体の給与等支給額の増加額の最大40%を法人税または所得税の税額控除することができます。ただし、大企業の場合は最大30%の税額控除となります。また、税額控除の上限は法人税額又は所得税額の20%となっています。

適用対象は、青色申告書を提出する中小企業者等であり、個人事業主も含まれます。適用期間は令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度です。個人事業主の場合は、令和5年から令和6年までの各年が対象となります。

この税制は、旧「所得拡大促進税制」をベースに見直されたものです。旧制度では、「前年からの継続雇用者」が適用要件とされ、教育訓練費や経営力向上計画の証明が必要でした。しかし、今回の改正では「継続」や教育訓練費、経営力向上計画の要件が取り払われ、より使いやすい制度となりました。

なお、中小企業には「大企業向け賃上げ促進税制」という選択肢もあります。中小企業向けの税制が不適用の場合でも、大企業向けの税制を適用することができます。大企業向けの賃上げ促進税制は、前年からの「継続」雇用者の給与等支給総額を比較し、一定の要件を満たした場合に税額控除が行われます。

この税制を活用できるのは黒字法人等ですが、政府は赤字でも賃上げに取り組む中小企業に対して補助金の補助率を引き上げる特別枠の設定を行うとしています。給与等の増加は「固定費の増加」という課題もありますが、企業や経営者にとっても労働力確保や競争力向上のために賃上げを実施する意義が認識されています。中小企業の成長と従業員の生活向上を両立させるために、政府の賃上げ促進税制は重要な手段となり得ます。

経営者の積極的な取り組みによって、賃金の停滞を打破し、日本の経済の発展に貢献することができるでしょう。賃上げ促進税制は、中小企業の経営者にとって賃上げの実現に向けた具体的な手段となり得ます。従業員のモチベーション向上や定着率の向上にも繋がり、企業の持続的な成長と発展に寄与することが期待されています。

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