コラム
生前贈与を考える
2023.06.20生前贈与とは、相続税対策の一つとして利用される方法の一つです。生前贈与には、暦年贈与、相続時精算課税、配偶者贈与などがありますが、今回は暦年贈与に焦点を当ててご説明します。
まず、一般的な贈与の方法について見ていきましょう。一般的な方法は大きく2つあります。
1.暦年贈与
暦年贈与とは、1月1日から12月31日の期間内で複数人から贈与を受けた場合でも、総額110万円(基礎控除)までは贈与税がかからず、贈与税の申告も不要となります。この方法を利用することで、最大55%の贈与税を節約することができます。
2.相続時精算課税制度
相続時精算課税制度は、相続税の前払方式であり、相続時に相続税として計算し直す制度です。この方法を選択した場合、暦年贈与を利用することはできず、戻すこともできません。
次に、暦年贈与における贈与税の計算方法について見ていきましょう。
暦年贈与では、その年の1月1日から12月31日までの間に受けた贈与の価額を合計して計算します。年間110万円の基礎控除額までは贈与税がかからず、超過分については超過累進税率を適用して計算されます。具体的な税率や控除額は、国税庁の速算表に基づいて計算されます。
また、贈与する財産は現金だけでなく、土地や建物、株式などの種類に関わらず適用されます。
ただし、贈与税の税率は平成27年以降、「一般贈与財産」と直系尊属からの「特例贈与財産」に区分されるようになりました。
暦年贈与を活用した生前贈与対策の具体例を見てみましょう。
例として、財産総額が15,000万円であり、年間110万円を子供3人に10年にわたって暦年贈与した場合を考えます。まず、生前贈与を行わなかった場合の相続税を計算します。財産総額15,000万円から基礎控除額4,800万円を差し引き、その結果を3人で均等に分配します。その後、各人の相続税額を計算し、3人分を合算することで相続税総額を算出します。一方、生前贈与を行った場合は、財産総額から暦年贈与分と基礎控除額を差し引いた金額を法定相続分として均等に分配します。そして、各人の相続税額を計算し、合算した結果を相続税総額とします。例の場合、生前贈与を行わなかった場合の相続税総額は1440万円ですが、生前贈与を行った場合は相続税総額が885万円となります。つまり、生前贈与を行ったことで約555万円も相続税が軽減されることがわかります。
ただし、暦年贈与を行う際には注意点もあります。相続開始前の3年以内に一定の相続人から贈与を受けた場合は、相続財産に加算される生前贈与加算や、贈与を受ける子供自身が通帳や印鑑を保管していなかった場合、税務調査等で「名義預金」とみなされ贈与と認められない可能性があるなど、贈与する際の手続きに関する注意点もあります。
贈与税の非課税枠を上手に活用することで、相続税を軽減することができます。具体的な方法や手続きについては、個別のケースによって異なる場合がありますので、専門家のアドバイスを受けながら進めることが重要です。