コラム
相続対策における生命保険VS預金
2023.06.20相続税対策を検討する際、預金だけではなく生命保険への加入も一考の余地があります。預金にはない生命保険の有効性と、両者の違いについて客観的に検討してみましょう。
【相続税と生命保険】
相続税を回避するためには、保有財産を適切に対策する必要があります。生命保険は、相続において有効な手段とされるいくつかの特徴があります。
非課税枠の活用:生命保険契約による死亡保険金は、非課税枠を適用することができます。具体的には、「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があります。相続人が受け取る死亡保険金はこの非課税枠内であれば、相続税の対象にはなりません。
死亡保険金受取人の指定:生命保険契約では、契約者が生前に死亡保険金受取人を指定することができます。そのため、契約者の意思により、相続人以外の人に確実に財産を遺すことが可能です。
手続きの簡便さ:生命保険の死亡保険金は、一般的に必要な書類を提出することで、比較的簡単に受取人の口座に入金されます。一方、預金の場合は亡くなった旨の通知があったときから口座が凍結され、遺産分割が終了するまでの間、相続人単独では払戻しを受けられない場合があります。
遺産分割協議の対象外:生命保険の死亡保険金は、相続財産ではなく受取人固有の財産となるため、通常は遺産分割協議の対象にはなりません。これにより、遺留分を計算する際にも生命保険の保険金は考慮されません。
【生命保険と預金の違い】
生命保険の相続対策には有効性がある一方で、預金との違いについても考慮する必要があります。
流動性の差:生命保険は契約期間中は流動性が低く、早期解約すると元本割れする可能性があります。預金の方が即座に利用できる点では有利です。
税制の変更リスク:税制が変更されることで、生命保険の期待した効果が得られない可能性もあります。税制改正のリスクには注意が必要です。
資産価値の変動リスク:インフレなどにより、生命保険の保険金の資産価値が下がる可能性も考慮しなければなりません。預金の方が資産価値の変動リスクが低いと言えます。
【まとめと注意点】
生命保険は相続税対策として有効な手段であり、預金とは異なる特徴を持っています。ただし、預金と比較すると生命保険の流動性は低く、早期解約には損失が伴う可能性があり、税制や経済状況の変化により、生命保険の効果が変わる可能性もあります。したがって、相続対策を検討する際には、自身の財産状況や納税見込み額を考慮し、生命保険の保険金額や受取人の選定などを慎重に検討することが重要です。
生命保険への加入は、保険代理店の説明だけでなく、専門家のアドバイスや複数の情報源を参考にすることをおすすめします。相続における生命保険の有効性と預金との違いを理解した上で、最適な選択を行いましょう。