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遺産分割協議の難しさ―感情と経済の葛藤

2023.06.20

相続に関する問題解決の一環として、遺産分割協議は非常に重要な要素です。相続人同士が円満に財産を分けるためには、事前に検討と計画が必要です。しかし、税理士にとってはこの遺産分割協議のコンサルティングが非常に難しい課題となっています。なぜなら、相続には感情がからみ、経済的な要素との葛藤が生じるからです。

税理士が日常的に行っている法人税や所得税、消費税などの節税対策は、知識と経験を基に効果的な手法を考え出すことができます。しかし、相続税に関する最善の策を見つけることは容易ではありません。相続には感情が介入し、関係者の心情や納得感が重要な要素となるからです。
節税を最優先する対策が必ずしも良い結果をもたらすわけではありません。納税額を最小化する方法が合理的であっても、家族の絆や将来への禍根を残してしまう可能性があるのです。

実際に、相続人の感情を十分に考慮せずに相続税対策を進めた結果、家族間での争いが発生してしまうケースは少なくありません。このような争いは、一度発生してしまうと解決が難しく、家族の絆を傷つける結果となることもあります。したがって、将来的なトラブルを避けるためにも、相続発生前に時間をかけて話し合いや対策を行うことが重要ですが、現実には問題が発生してからの対応に苦慮するケースがほとんどです。

特にオーナー社長の相続対策は困難な課題です。財産の分割と同時に事業の承継も考慮しなければならないため、さらなる複雑さが生じます。複数の子供がいる場合、経営者として適性がある人物とない人物が存在することは珍しくありません。このような場合、兄弟の力を合わせて事業を発展させるために、株式を均等に分けるという選択肢を選んだ結果、家族の争いや会社の分裂を招くケースが数多く存在します。オーナー社長は自身が築き上げた会社に強い愛着を持っており、家族のためにも事業の存続を考えることが多いですが、その判断は容易ではありません。

また、オーナー企業の場合、個人の資産と法人の資産の境目があいまいになっていることも問題の一つです。個人の資金が法人に貸し付けられていたり、個人の土地に法人の施設が建っているなどの事例では、遺産分割協議において公平な分割を実現することが非常に困難になります。さらに、自社株の承継に関しても難しさがあります。自社株を後継者に移転する方法は売買、贈与、相続時の引き継ぎなどがありますが、いずれの方法においても高額な税金が課せられる可能性があります。売買の場合は差額に税金がかかりますし、贈与の場合は贈与税が発生します。自社株の評価額が高くなっている場合、相続税の納付に相続人が苦しむ結果となる可能性もあります。

結局のところ、遺産分割協議の難しさは、家族の状況や感情、事業の特性など個別の要素に依存します。一つの絶対的な解決策は存在せず、先人の成功や失敗事例を参考にしながら、状況に応じた柔軟な対応が求められます。税理士は専門知識を駆使しながら、時間をかけて相続人の感情や経済的な要素を考慮し、円満な遺産分割協議を支援していく必要があります。お客様の相談相手として税理士ができることは、多くの事例から学び、今の状況を理解した上で、何を最優先してすすめるのか助言とヒアリングを繰り返し、協議を前向きに、無理なくすすめることなのかもしれません。

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