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後継者へ事業を託す際に活用したい「事業承継税制」とは

2023.06.15

事業承継税制とは、企業の経営者が後継者に事業を引き継ぐ際にかかる税金に関する特別な制度で非上場会社のオーナー兼経営者が、後継者に自社株を贈与や相続するときに課される、贈与税や相続税の全部又は一部の納税が猶予されるという制度です。

事業の承継に伴う財産の譲渡や相続には高額な税金がかかる場合がありますが、事業承継税制はその負担を軽減することを目的としています。先代経営者に突然万が一のことがあったとき、短期間に高額の納税資金を準備する必要があります。納税資金の準備が困難になるような事態を解決し、事業承継への負担を軽減し、安心して事業を託せる準備を整えたいものです。

事業承継税制の目的は以下の通りです。

1.事業の継続性を保つ: 事業の承継に伴う高額な税金が支払い負担となり、事業の継続が困難になることを防ぎます。

2.中小企業の発展を促進する: 後継者による事業の継続がスムーズに行われることで、中小企業の成長や地域経済の発展を支援します。

制度について

事業承継税制の適用を受けるには、複数の要件を満たす必要があります。事業承継税制の具体的な制度について説明します。

・一般措置と特例措置: 事業承継税制には一般措置と特例措置の2つがあります。一般措置では相続時の納税猶予割合が80%までであり、雇用維持などの要件もありますが、特例措置では令和9年12月31日までに生じた贈与や相続の贈与税・相続税の全額が納税猶予されます。

・特例承継計画の提出: 特例措置を利用するためには、令和6年3月31日までに特例承継計画を都道府県に提出する必要があります。この計画が承認されると、贈与や相続が生じた際に猶予が適用されます。

一つ事例をご紹介します。

株式会社ABCは、先代経営者であるA氏が創業した中小企業です。A氏は高齢になり、後継者である息子のB氏に事業を引き継ぐことを決めました。しかし、会社の株式の評価額が高額であり、相続税の支払いが課題となりました。税理士との相談の結果、事業承継税制を活用することが提案されました。

具体的な手続きとしては、以下のような流れで進められました。

1.特例承継計画の作成と提出:B氏と税理士は特例承継計画を作成し、都道府県に提出しました。この計画では、B氏が事業の継続に向けた意思や計画を明示しました。

2.特例措置の承認と納税猶予: 特例承継計画が承認されると、相続時の贈与税・相続税の納税猶予が認められます。ABC社の場合、相続税額は5000万円とされました。

3.株式の引き継ぎと猶予期間の運用: B氏は相続された株式を引き継ぎ、事業の経営権を受け継ぎました。相続税の納税猶予期間は5年間となりました。

この事例では、事業承継税制の活用により、相続税の納税負担が軽減され、事業の承継がスムーズに進められました。特例措置の適用により、相続税の納税猶予を受けることができたため、B氏は事業を継承するための必要な資金を確保することができました。

このように、事業承継税制の活用は事業の継続性を確保する上で重要な役割を果たします。税理士との相談や適切な手続きを行うことで、相続税の負担を軽減し、後継者に円滑な事業承継を実現することができます。

事業承継税制は非常に複雑な制度ですが、後継者が死亡した場合等には猶予された税額の納税が免除されるなど良い制度と考えます。税理士に申請や届出を依頼し、確実に事業承継税制を活用していくことをお勧めいたします。

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