コラムサブタイトル

コラム

デジタル化に伴う印紙税の変化について

2023.06.15

近年、企業の間で電子契約の導入が増えています。その背景には、電子契約には印紙税が課されないという利点があります。同じ内容の文書でも、デジタル化することで印紙税の支払いを回避することができるため、アナログな契約手続きに比べて非常に魅力的な選択肢となっています。では、具体的に電子化に関連する印紙税の取り扱いについて解説してみましょう。

まず、印紙税が課される文書を「課税文書」と呼びます。課税文書には以下の要件があります。
① 印紙税法別表第1に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項が記載されていること。
② 当事者間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
③ 印紙税を課税しないこととされている非課税文書に該当しないこと。
これらの要件を満たす文書が課税文書となります。

なお、印紙税法上の課税文書の「作成」とは、単なる文書の作成行為だけではなく、課税文書となるべき用紙に課税事項を記載し、その文書の目的に従って行使することを指します。つまり、領収書や請求書など、相手方に交付する目的で作成される課税文書は「交付の時」が「作成の時」となります。一方、契約書など当事者間の意思の合致を証明する目的で作成される課税文書は「証明の時」が「作成の時」となります。

電子契約の場合、課税文書となるべき用紙などの現物は作成されず、文書の交付も行われないため、印紙税の課税対象にはなりません。つまり、電子契約では印紙税を支払う必要がないのです。具体的な例を挙げてみましょう。

例えば、電子メールで注文請書を送付する場合、注文請書は請負契約の成立を証明する文書であり、課税文書に該当します。しかし、PDFファイルなどを電子メールに添付して相手方に送信した場合は、課税文書を作成したことにはなりませんので、印紙税は課されません。
相手方が受信した電子メールの添付ファイルをプリントアウトしても、印紙税の課税対象にはなりません。同様に、FAXで注文請書を送信した場合も同様です。ただし、別途現物の文書を交付した場合には、その現物の文書が課税文書となるため、注意が必要です。

また、電子領収書についても同様の考え方が適用されます。領収書は金銭や有価証券の受け取りを証明する文書であり、一定の金額以上の場合には課税文書に該当します。しかし、電子メールで送信したり、インターネット上で取得する方法で電子的に発行された領収書は、紙の現物を交付しないため、印紙税の対象外となります。

さらに、クレジットカード決済による領収書についても特記事項があります。金額が一定以上の場合には課税文書となる領収書ですが、クレジットカードによる購入は信用取引によるものであり、「金銭の受領事実」が存在しないため、印紙税の対象外とされています。ただし、領収書にはクレジットカード決済であることを明示し、金銭の受領がないことを明確にする必要があります。

このように、電子契約においては紙の文書を交付する手間を削減できるだけでなく、印紙税の節税にもつながるメリットがあります。企業がデジタル化を検討する際には、印紙税の取り扱いも考慮してみると良いでしょう。電子契約の導入は効率性の向上にもつながりますので、積極的に検討してみる価値があるでしょう。

最新の記事

相続税の納税資金を考える

2023.06.20

自計化するか否か。そのメリットとデメリットとは

2023.06.20